人口が過去最多になったとの発表があった。
私は下松市に住んで30年。当市が過去、転々とした住居のうちで最も住みやすい街であるとの自覚をしており、この私の思いを人口が増えるということで証明してくれているようで嬉しい限りである。他市の方から「最多人口を更新した理由は何か」と問いかけられるたびに誇らしく受け止めているのは私だけではあるまい。また、人口増は何も手をくださずに生じた現象ではない。これまで打ってきた施策が正しかった、少なくとも多くの他市より的を得た対応をしてきたことの証左と思われて、これまで行政に関わった方々に敬意を表したい思い。 そこで、今回は(1)人口はどう増えたか、(2)増えた要因は何か、(3)現状の問題点は何かという3つの観点で私なりに人口の分析をしたいと考える。
別紙1の1は最近の人口推移を示している。この1年間の人口は476人増と顕著なものになっている。急増している大手工場向け外国人の増加数を差し引いた後の304人増という数字も、過去にないレベルではないか。世帯数も同様であり、私の計算では外国人を除いてもここ10年間で1900戸近い増加となっている。地価の下落に左右されなければ、固定資産税は1億円を超す増収が見込まれるていたはず。同様、市税対象市民の数も10年間で381人増加、単純計算すれば市民税4000万円強増収になる仕組みができたということであろう。
2は人口動態だが、自然増減は例年100人前後、死亡が上回る状況に変化がなく、出生と死亡を対比すれば全国並みの数値。しかし、山口県全体では出生に対して死亡が大きく上回っており悲惨といえる状況を示す。
3は5年間の地区別世帯の変動であるが、増加は末武、花岡に集中するというアンバランスを示している。業者からは周南市ほどではないが、住宅地、殊にマンション用地に適した土地が少なくなったという声を聞いた。
4は周南3市の中で下松市のみが周囲の人口を食っているような構図を示し、5は人口問題研究所の推計人口を良い方に裏切っていることを示す。
6以下は人口増加をもたらした要因を探ってみた。6の合計出生率の12年までの数値は圧倒的な県内一番。しかし、最近の1年間の出生数は550人前後であった5年前のレベルと比較すると2年間500人を割ってきており、新しい数値の発表が待たれる。
7では現状の世帯数に比較して、結婚の件数は県内1の数値、離婚数は県内5番目の低さ、よって結果として夫婦の増加数は県内一の水準になっており、出生率に直結していると思われる。
8と9はこれまでの結果、現在、下松市の若年比率や幼児の人口構成比が全国ベースや県全体と比べる圧倒的に高いことを示している。ただ、ここでは20歳を過ぎて若者の他市への流失度合が大きいことが窺える。
これは次の10の企業活動の停滞に要因があろう。5年間の事業所数も従業員数もいずれも県内他市比では減少率が低いが、全国ベースとは見劣りがする。下松市が人口動態で社会増になっているのは、働く場所があるというより、住みやすいという点にあるのかもしれない。
住宅着工数は世帯数から推し量ると県内1、それも他市を圧倒している。当市の住宅地としての魅力の高さを明確に示している。ただ、業者からは「良好宅地があればまだまだ下松市に流入する余地があるが、まとまった住宅用地がない」と聞く。殊に、マンション用地は品薄である。 マンションに関して観てみると、ここ5年間で6棟できて室数は330戸、市外からの購入者が30%、一家平均2.5名と大胆に仮定すると約250名社会増加になったことになる。仮定の数字で確認のすべがないが、まず大きく相違してはいないであろう。 現在、下松駅北に84室のマンションが計画されているが、マンション需要がいきわたるにしたがって、また、物件が駅に近くなるに従って市外からの購入者が増えるというのが業者の方のお話であった。84室の50%✖2.5人・・・このマンションで約100人の社会増が期待できるということになる しかし、現在表面化しているマンションはこの1棟のみ、一時期の勢いがない。対応策は有効土地次第ということになる。
以上、人口増の内容とその要因らしきものを抽出して分析をしてみた。その内容と、大手や地元住宅関連業者から聴取したしたことを加えて私なりに疑問と思ったこと、今後の対応策として必要なことを列挙する。
1は外国人の対応である。人口の100人に1人もの外国国籍の方へ、皆様が住みやすい環境への配慮が必要になってこないか。
2は若年者が多い反動もあろうが、20歳を過ぎて他市への流出が目立つ。つなぎとめる何かを創ることはそう簡単なことではないが、住宅環境が整っている、言い換えれば住み良さのみに頼って社会増減を待つことばかりの施策で良いのかということ。
3は住宅地が末武、花岡に集中して周辺地とのバランスを欠いているという状況。また、土地が品薄なりつつあるということ。この「良好な住宅地の創造」という施策を行政が積極的に打っていく必要はないか。
4は出生者数が減少しているということ。08年から12年までは年間550人ぐらいあったものが、15年、16年は500人を切っている状況にある。婚活、出産、育児という流れの支援をこれまで以上に対応していくことに迫られている。
5は総花的であるが結局は住み良さを追求するということであろう。周南市三田川付近の道路が整備されれば、徳山駅への距離もますます近くなる、久米地区への商業施設の進出は、長期的には市内同業種との相乗効果を生まないか。利便度が高いという要素に加え、事故や犯罪が少ない、楽しいイベントが多い、自治会が機能している、そして住民の気質が良いとか、日本一の夕日が観られる環境とか、他市に例のない漁業振興施設としての栽培漁業センターのリニューアルが計画されている等の従来路線の充実が人口増に直結するものと思われる。
6はNO12に示している80歳以上の女性の増加である。5年間で80歳以上の女性人口が321人男性を上回ったということは、そのまま独居の女性世帯がそれだけ増えたということにならないか。当然様々なニーズが生まれ、それに対応していくことを余儀なくされる。覚悟と準備が必要になると考える。
最後は当市だけの問題ではなく全国的にはさらに深刻だと思えること。NO13の表、若者の男女比率において男性が高いこと。20歳未満の男性比率が女性を5%以上上回るというのはありえない数値といえないか。このままいけば、50歳時点で独身の割合が大雑把、男性20%、女性10%であるという全国の人口対策上の問題点をさらに難しくしていくと懸念する。
ともかく、今は下松市制最多人口を喜びたい。何か祝賀行事か記念行事を計画されていないか。今後は人口ビジョンに示されているとおり、減少トレンドは避けられないと考える。「あの時点が最多人口だったなあ」と思い起こすことができるような、また、子供たちに故郷の人口定住について、自らの住んでいる街に関して何かを印象づけるようなイベントは必要ないか。