2部構成になっています。長いので途中までお読みください。
テーマはアフターコロナのニューノーマルの元で、行政は
1. 稼ぐ、省くをどう推進していくか
2. 財政の将来不安を市民にどう理解を得るか
3. 新たな戦略を集中して検討する「将来課題管理室」というような部門を市長直轄で設置してはどうか
の3点。
今回のコロナショックは我々に新しい生活様式、新しい経済環境、そして新しい規範や思想を突きつけた。ある本から・・・「危機の襲来に対峙し、これから起きることに対して最善の準備と最良の決断をするには『想像力』が重要である。今、目の前にある危機を生き残ると同時に、パラダイム転換後のニューノーマルを展望、想像し、諸々の準備を仕込んでおくことが求められている」・・・とあった。
私は今回の質問中『想定』ということばを数多く使った。ポイントになるのは、まさに今まで経験したこのとのない、新しい規範、新しい生活様式への『想定力』であろう 。そこで、今回は、どのような変化が起こるのかを想定し、その変化を先取りして、生き残るために行政がなすべきことは何かを探っていきたい。
まず1.経済はどうなるか。別紙A表❶の法人市民税の推移を観て欲しい。2008年秋に発生したリーマンショックの影響はどうでているか。08年度には10億円を超えていた法人市民税が、6年目に10億円台に復活している、まさにU字型回復を示している。今回はこの程度で落ち着くか。きっとさらに大きい落ち込みと、長期化を覚悟しなければならないであろう。
2として雇用。5月に行われた市内企業アンケートでは、解雇、出勤調整、新規採用の取り消し等の対応済という回答は40%を超えている・・・僅かな期間に40%の雇用縮小の流れとは、戦争でもなければありえないのではないか。雇用を維持する、雇用の場を作り出すという試みが、絶対的に必要になると考えるがいかがか。
そこで、3として雇用機会の増加策、イコール働き場所の創設について。私は、これが今後の長期的視野での街づくりの最重点施策になると考える。理由の1は、さきほどの失業者対策。理由の2は、今回のショックで、東京圏から移住希望やふるさと回帰が見込まれるという想定。理由の3は、地元の若者の就職先に、地元が選択される率が増えるとの想定。そこで働き場所の受け皿の創設。今回のショックで顕在化したのは、サプライチェ-ンの見直しの流れ。企業の国内回帰は企業誘致のチャンス、雇用増に直結する。しかし、残念ながら本市にはまとまった誘致可能な工業用地がない。柳井市は工場跡地に㈱トクヤマさんを誘致した。地元雇用に期待の声があがっていると聞く。岩国市も本市と同様、重油による火力発電所を完全閉鎖した中電さんの跡地の誘致に力を入れていくであろう。本市にも、山田地区に住宅開発を許可した土地が眠っている。日石跡地ほか可能性のありそうな用地もある。行政が自ら仕組めば誘致可能な対象はないか。相当無理をしてでも・・・つまり度を越した選択と集中を行っての先行投資が必要ではないか。
4は農業振興。今回のコロナショックは、以下の命題を突きつけた。㊀必要なものが金をだしても買えないという事態が起こりうること、㋥国内で調達し国内市場で商品をはかすという流れが重要な生き残り策であること、㊂複数の国で農作物の輸出規制が実施されたこと・・・今後食料需給のための施策=農業傾斜の対応が各自治体に要請されるであろう。本市の農業への関りはA表❷の歳出に占める農林業費の割合のお粗末さをみるまでもなく、まさに“農業放棄市”状況にある。全市をあげての農業法人の誘致ほか、知恵をしぼれば少ない資金でもって効果をだす対応策がありはしないか。
5は消費。コロナという将来を見通せない非常事態にショックを受けて、㊀新しく家を建てようという意欲、㊁新車を購入したいという意欲、㊂結婚しようとする意欲、㊃子どもをつくろうという意欲・・・これらの減退が想定される。これは消費の落ち込みに直結する。本市独自でも、たとえば㊀調整区域を見直したり、空き家住宅の再生による安価で良質な住宅地の提供、㊁結婚、子作り等の創生事業への知恵をしぼった思い切った踏み込み・・・創生戦略の見直しが必要にならないか。
7は財政対応。A表❶はリーマン以降の市税の推移。08年度の市税の合計額は100億円を超えていた。ところが、リーマンショック後は、大幅な落ち込みになり、10年経過した18年度決算においても市税総額95億円とピーク100億円に5億円も届かない状況が続いている。リーマンは“失われた10年”を生じたが、今回は、どの程度の額でどの程度の我慢の期間を覚悟しなければならないか。
一方、国は多額のプライマリーバランスを無視した赤字国債を発行して、コロナを乗り切ろうとしている。今後、地方への交付金、補助金は、また、地方消費税交付金は、どこまで落ち込むか。本市の財政運営においても、現下のコロナ対策に加えて、雇用機会創出等経済対策や、このような時期に最も被害の大きい生活弱者への支援強化・・・以上、コロナの影響が避けれない財政状況を考えると、将来において市民が現状程度の負担で現状程度の市民サービスを受け続けることができるか不安にななる。このような状況を克服するには、とても「財政構造の見直し」程度の対応で収まるとは思えない。
まず、知恵を総動員して、あらゆる行政機能、あらゆる行政資産、あらゆる行政機会を活用して“稼ぐ”(B表❺❻をみるまでもなく本市の稼ぐ仕組みはお粗末すぎる)、次に市民にこの財政窮状を理解してもらって、危機意識を共有していただき“省く”・・・そのような踏み込みが早期に必要にならないか。
一方、最後の8として、コロナが本市に幸いをもたらすものは何か。先ほどのサイプライチェーンの見直しは期待できる。東京圏の住民のコロナ疎開、若者の地元志向等、新しい流れを行政の施策に生かすにはどうしたら良いのか。組織が構造変革や常識超えができるのは、今回のような厳しい課題をつきつけられた時である。松下幸之助語録『好況よし、不況なおよし』は、ピンチは新しい仕組みに転換できるチャンスになることを教えてくれている。アゲンストの風の時こそたこは高くあがるのである。
以上、評論家的な推定を並べてきた、しかし、よくよく考えてみれば、日々の仕事に振り回されている職員の皆さまには、そのような推論、空論に付き合う余裕がないかもしれない。また、失礼ながら、行政マンとして長年生きてきた皆さま方には、これまでの常識超えの対応策などへの知恵には、限界があるかもしれない。
しかしそれでも、㊀常に夢を語っている、㊁周囲とは波長の違う発言を繰り返す、㊂上司や組織の存在をなんとも思わない、㊃口は悪いが頭脳は悪くない・・・そのような方が庁内に2人や3人はおられると思う。そのような人を市長直轄で集めて「将来課題管理室」を創設していただきたいと考える。
6月1日の全国紙に大手商社の国民へのメッセージが掲載された。この会社の社是は『稼ぐ、削る、防ぐ』である。実は私はこれから『稼ぐ、省く』という私なりのフレーズの参考にさせていただいた、つまりパクらせていただいた。
この訴えを私なりに要約してみた。『少しづつ状況が変わり始めた。今の時点は防ぐの時だが、これからは経済の番。何ごとも早く手を打つこと、今だからこそ新しい方法を生み出すことが大切になる』とした上で『相当な時間がかかるでしょうが、この先に待っている、ニューノーマル・・・懐かしくて新しい、みんなの日常に帰りましょう』と結ばれている。
コロナという目の前の対策に明け暮れる毎日であるからこそ・・・ ㊀将来に想定力を働かせることに 、㊁課題に向けて早く手を打つことに 、㊂これまでの常識を打ちやぶった新しい仕組みを生みだすことに・・・これらに知恵を集中する役割を「将来課題管理室」に担って欲しいと考えるがいかがか。
以下は、これ以上の長文におつきあいが可能な気力のある方のみお読みください。面白いですよ。決して皮肉を言っているのではありません。
以下の5つの話は、行政においてこれまでの発想を超えて、成し遂げられたことばかりだということ。やればできると大いに評価をする。しかし、逆に考えれば・・・これまで対応できなった壁は何であったのか、新しい仕組みの発想にまで飛び越えられなかった理由は何であったのか・・・そのことに思いをめぐらせる必要がある。それが、今後、アフターコロナの新しい仕組みを考える時の参考にならないか・・・そう考えた。
㊀夢タウンの前庭に駐車場が広がった。私は考えた。。夢タウンが創設されて以来30年、駐車場不足は長年の課題であったはず。では、なぜあの場所を駐車場にしようという発想がなかったのか。これまでの常識を打ち破って、誰がここを駐車場にしようと発想したのか。そして、既存の流れを断ち切って誰が決断したか・・・どうか。
㊁B表❸に大城の1~12月の経営数値を3年間比較している。これをみると、利益額は18年比較、なんと50百万円近い増益になっている。大雑把に要因を探ると、ひとつは、宿泊単価をあげていること、ふたつは経費比率を大幅に圧縮したことの2点。宿泊単価・・・宿泊者を減らさずに値上げをすること、そんなに簡単なことではない。一方経費率をここまで圧縮できたこと・・・同じスタッフがこれまでの既存概念を打ち破って意識改革ができた意義は高い。これまで多くの企業経営を観てきたが、ここまでの内部変革を知らない。そして、この経営改善が経済部の強い指導のもとに実現できたことも、指摘しないといけない。
㊂B表❺の救急車発動件数。昨年は初めて前年比75件のマイナスになったと聞いてびっくりした。今年もコロナの影響もあるであろうが、大幅な減少で周辺市に比べてもその幅が大きいことが観て取れる・・・なぜ減少したのか。私は、数ある理由の中に「不要不急の救急車の利用は控えて欲しい」という地道な投げかけの成果ではないかと考える。市民への周知が結果となって顕れた好事例ではないか。
㊃米泉湖のウォーキングコースに距離を示す表示板ができたこと。私も以前市民からの要望で職員に問いかけたら、「県の施設で無理」との答えであった。そんなものであろう。今回、ロータリーさんの寄付が後押しになって実現した。それも、まことに柔らかな表示となっている。私は考えた・・・それでは、今までできなかったのはなぜか。金の問題だけか、今回誰がやろうと発起したのか。
㊄市民課の窓口の前を通っていた時、年配の爺様(私ではない)に向かって女性職員が『ご用件は承っておりますでしょうか』と発した一言。驚いた。それは、そのことばの丁寧さとかしつけではない。私は銀行の窓口の経験があるが、立っているお客様に向かって、要件を訊ねるような場面を知らないし、そのようなマニュアルもない。窓口に来られて用件を言われるまで待つのが通常。私はこの女性職員の投げかけに、受け身ではなく、自ら市民寄り添おうとする役所の潜在的なスタンスをみたと・・・大げさでなく驚いたのである。
以上・・・長文のおつきあいに感謝します。