10月に下松市の世帯数は2万5千世帯を超えました。1996年に2万世帯を超えて20年を要しています。こんな勢いの市は珍しいと思います。ご同慶のいたりだと考えます。
今般下松市が作成した「人口ビジョンと創生総合戦略」について・・・緻密な分析と多方面からのアプローチによって具体的な対応策が語られており、熱意が伝わる労作と評価したいと思います。この中で、国立社会保障問題研究所は2060年、今から45年後の推計人口を44,674人としていますが、同所の10年前の予想が見事にくるった(20年の予想を約3,000人減の50,200人としていたが現時点で大きく上振れしている)ことを、再度この総合戦略をもとに予想をくるわせて欲しいものだと考えます。
本日の質問テーマの関連として「人口ビジョン」に対して私見や異論を述べたいと思います。
見解が違う点が2点。 人口ビジョンP17には「近年、持家の増加に比べて民営借家(アパート)の増加が著しいため持家割合に減少傾向が見受けられる。市民の定着度に不安が感じられる」とあります。この表現は「都市データパック」において「持家世帯比率」が全国813市と区の中で531位と低位評価であることと同じ趣旨でありましょう。しかし、違ってはいないでしょうか。現在アパートに住んでおられる約6千5百世帯は、将来当市に持家を持っていただける可能性のある予備世帯と位置づけられないでありましょうか。なんといっても当市は市民アンケートの永住希望の調査では「できれば他へ移りたい、住みたくない」という否定回答が僅か2.4%であるという強みがあるのです。
P23には「市内在住の就業者に対して、市外在住の就業者が1,300人多く、通勤流動に関して流入超過となっている。これら市外から通勤する従業者に対して市内へ移住を促すことが、人口確保に寄与する可能性がある」との表記がありますが、市外から下松市に通勤している総数は約12,000人であります。ごくごく単純にいえば、下松市に移住の可能性のある対象人数はなんと12,000人もあるということが語られていないと思います。
人口ビジョンに加えて欲しい視点が2点。 ひとつは20歳から44歳の「人口再生年齢層」のなかで男性の数。生活環境部の資料によれば、この10年間で男性の数は113人増加していますが、注目するのはこの年代の男女差。男が493人も多く、かつこの10年間の男女差は391人に拡大していることです。この結婚適齢期と言われる独身男性が結婚してくれて、かつ願わくば他の市町から嫁さんをもらってくれれば、人口増加に直結する。この層に嫁さんをもらう仕組みはないのか。出生率向上のための重要な施策となると思うが・・・どうでしょうか。
いまひとつは「安価で良質な住宅地を創造する」という視点です。現在の市場の地価を平均して下げるような仕組みができれば、持家比率はあがる、若者の持家希望に応えられる、また、他所からの流入は増える、一時全体の固定資産税税収は減少しても10年後の税収増には結びつかないでしょうか。 以上の観点を踏まえて、今回は「良質で安価な住宅地の創造」の一点にしぼって質問させていただきます。
提案にいたる根拠付けとして、「下松市の強み」を5点あげたいと思います。 ①前記のとおり持家予備軍である借家アパートの世帯が増加していること ②住宅関連業者の多くが条件が整えば引き続き当市の住宅ニーズは高いと話していること③新笠戸ドック、武田薬品、㈱トクヤマ、下松バルクターミナル、夢タウン周南等に雇用の場の増加が見込める状況があること④光市の虹ヶ丘からの道路が188号線に延伸されれば、周南市三田川付近の国道が高架になれば・・・利便性が高く、新幹線駅までタクシー3,000円内外である下松市の住宅地としてのニーズはさらに高まるであろうこと、⑤そして何よりの強みは、当市が「住みよさランキング20位」と住みよさが認識されていること そこで・・・これまでにない観点で、今埋もれている地区の土地の価値を掘り起こすことで、良質で安価な住宅地を創造する。そして、そのことで人口増加に結びつける・・・そのような視点で以下の戦術の提案をしたいと考えます。
言い訳させていただきます。 先輩議員は(1)人口増加推進には、まず子育て環境の充実等そのための仕組みつくりが不可欠(2)一人下松市のみが一勝ちで人口増加をみても意味がない。周南三市全体の浮揚をめざすべき・・・という「そもそも論」を語っています。 私が以下述べる視点にはそのような本質的なアプローチがありません。理屈をつけたいと思いましたが考えが及びませんでした。お許しねがいたいと思います。
そこで『良質で安価な住宅地の創造」という観点で行政に要請したいことを6点申し上げます。
1.市街化調整区域の線引き見直し 11年前に区域指定を解除した香川県高松市に行ってきました。県内各市町の首長からの要請に県が解除に動いたとのことでした。 道路が狭く入り組んでいること、小学校にプレハブ校舎が見られること、雨水の処理が難しいこと等のデメリットは生じているようですが、しかし、旧調整区域には下水道を設置せず合併浄化槽に一本化しているなど一定の折り合いはついているように見受けました。 解除後、旧市街化区域の土地価格は2割程度減価したと業者はみています。調整区域の安価な土地を開放したことで、旧市街地の土地価格を低下を促したのです。このことによって若年層、20才台の戸建てのニーズを増加させたのです。 この反映もあってか、高松市の人口は増えています。が、一方周辺市町の宅地の評価が劣化して、結局のところ高松市一人勝ち状況にあるとのことです。 高松市の例をみると、線引き解除は(1)安価な土地を作り出すこと、(2)戸建てのニーズが広がることに結びつくことが判りますが、一方、線引き廃止が乱開発に呼び起こす要素も否定できないと受け止めました。 当市においても・・・線引きを解除すれば、現市街化区域の地価を推し下げることも含めて「良質で安価な宅地」を生み出すだすことは予測できます。市長は来巻地区に農園付の住宅を誘致できればという希望を持っておられます。そもそも「下松市の平地はその面積や地形、環境からしても線引きが必要であったのか」と、この50年あまりの流れを見返す時期がきてはいないでしょうか。 結論として・・・線引き解除時に農地や山地の宅地化に一定の制限や管理を求めることを前提にして、県に見直しの申し出をしていただけないでしょうか。
2.子育て専用の市営住宅の建設 ここでは市の所有物件の市場への開放を求めたかったのですが、下松市は全体の地価を引き下げるほどの効果のあるまとまった土地を保有していないということで、次の4番目の提案に関連する戦術をひとつだけ述べたいと思います。 子育て市営住宅の建設・・・たとえば(1)泥んこのユニホームを洗う流し場を設置する、(2)スイッチやコンセントの位置を小学生でも届く位置に置く、(3)居間はパソコン台を置いて家族揃ってパソコン操作のできる場所とする、(4)幼児の寝台、おしめ対応のため半畳分の畳の場所を設置する、(5)最後の子供が中学を卒業したら市営住宅を出て行く契約をあらかじめしておく そのような市営住宅で若者移入を増やしたいと考えますが、詳細は次回の質問に回したいと考えます。
3.空き家への対応 空き家には2つのタイプがあります。
まず、リフォーム可能な空き家。これにはリフォーム業者から様々な仕組みの提案があろうと思いますので置きます。 次に、フォーム不能な空き家。行政(あるいは行政の関わった組織)あるいは住宅メーカーが空き家の所有者から土地建物を買い取り、建物を解体して更地にして販売する。結果、市価の1~2割安程度の販売価格とする。市が主導して空き家千軒にアタックする。「空き家をどうかされませんか」とアプローチするのです。
空き家の購入価格は市場価格の4割程度が上限・・・それ以上出すと市価の1~2割安という仕組みにならない、4割が限度でありましょう。 市場の4割という提案に対してでも、遠隔地、相続、家庭の事情等で早期売却を希望する所有者はでてくると思います。 そもそも「空き家対策」を実施してもそんなにたくさんの数が成立するものとは思えませんが、この「良質で安価な宅地創造」のための住宅買い上げ策は、数ある空き家対策のひとつと位置づけられないでしょうか。
4.山田地区の宅地造成 10年前から250戸の大規模開発が棚上げになっているとのことで、関係者に訊いてみました。「土地の所有者には売却の意志はあるが、造成して販売するには割高でデベロッパーとして手をあげる業者がいない」とのことでありました。一方、土地価格は周辺地であるからして相当の安価でないとスムースな完売は難しかろと予測できます。関係者は造成費の圧縮やある程度の売却促進に市の協力が欠かせないとしています。 本地は東陽団地同様南向きでなだらか、小中学校も近く、また、市内中心部に人口が集中する不都合(コンパクトシティの理念からは逸脱するが)を薄めるという効果がある場所という魅力があるし、戸数がまとまっているという魅力もあります。そこで・・・たとえば上記2で話したような「子育て専用の市営住宅」、欲を言えば区域内に保育所を併設する・・・そのような行政の後押しができないものでしょうか。また、下水道施設設置の協力ができないでしょうか。
5.仮称ふれあい線の延長と住宅地の創造について 記念病院さんは周南、光、下松の3市の病院の連携強化のために、ふれあい線の国道188号線までの延伸を望んでいます。護国神社に車道が接続することを希望する声もあります。 私はこの道路の延伸に併せて南側の丘陵地の新道路沿いに住宅団地の開発造成を希望するものです。この場所は相当以前に300戸の団地造成の計画があったが頓挫したと聞いています。いくらかの住宅業者に聞けば、当地の開発は丘陵地という欠点はあるものの、瀬戸内海国立公園の海や島々を一望できる眺望もあり、概ねプラス評価をしています。 この地なら「コンパクトシティ」の要素をクリアーするし、大型造成ができれば市内の宅地価格を推し下げる・・・まさに「良質で安価な宅地を生み出す」ことになりましょう。まずは道路ができなくてはいけません。検討をお願いします。
6.JR下松駅周辺の再開発を 下松駅にからむ課題に(1)きらぼし館に駐車場が無いこと(2)昇降のためのエレベーターの設置が求められていることがあります。私は下松駅を中心として東西500メートルの線路を地下にもぐらせる、そして、その地上に空き地を創造することでこの課題を解決する、併せて3万へーべの宅地の創造する・・・そのような発想をして、親しいJRのOBに問いかけましたがが「そんな例は皆無」と一笑に付されました。 そこで、貨物が止まらない駅であることを利点として、線路を北側車線に集めて、残地(私のつたない見積もりで)約1万へーべを生み出して住宅地として開発することを提案したいと思います。一旦市がJRから買い取って、駐車場用地や「駅前保育所」、公園等の公共施設とともに、マンションや戸建て用地として活用するのです。 下松駅を中心とした地域は、住宅、マンションメーカーには垂涎の的でありましょう。また、駅の利用促進=公共交通機関の利用促進という側面も評価できると思います。まさにコンパクトシティの流れの中にあると考えます。JRとの交渉はそう容易ではないでしょうが、現在埋もれて生きていない土地を再生するという視点にたてば魅力的な対象になると思いますが如何でしょうか。
以上6案、いずれも突飛でこれまでとは不連続な発想でありましょうが、「何か新しいものを、何か違ったものを」という観点でこのような発想を展開していけば、延長線上に見えてくるものがありはしないかと考えるのです。