12月議会の質問・・・行政が仕掛ける

8・資料

今回も読者のニクジを無視した形で、質問した7割を載せます。全文15分程度かかると思いますので、心と時間の余裕がある時に・・・。

 

今回の本市の総合計画基本構想では、10年後の人口を5万7千人という想定がなされている。人口減少がトレンドの地方都市が多い中で、これほど大胆な目標を掲げている街は稀であろう。ここ1年間でも人口は実質的に増え続けている…A表❹。

この事実は、本市の「住みよさ」のもたらすものと思うし、また、本市行政の打つ手が適格であったことを裏打ちしているものとも思われ、嬉しく誇らしい思いになる。  

しかしながら、57千人の人口維持は簡単なものではない。街の活力や安全安心力、さらにそれらを支える財政力を加味した政策力、つまりこれまでにない、的確な戦略が必須になってくると考える。 

 

ふたつの判りやすい仕掛けの例を申し上げる。   ひとつの例として、市税徴収率をあげたい。A表❶をみて欲しい。  本市の徴収率は見事な推移をみせている。 ➀5年間で長期滞納額を実質49百万円回収した、 ②件数は60%も減少している、 ③A表❷の県内比較においても国保税の有無を考慮すれば実質的にトップの徴収率になっている・・・これらの数値は〝常識超え〟の数値と受け止める。

徴税業務は簡単なものではない。滞納される市民には滞納するだけの家庭の事情があるなかで、徴税職員はつらい業務に従事している。       なぜできたか・・・ひとつはどうしたら払っていただけるかの戦術つくりの知恵であろう。もうひとつ…厳しい交渉に立ち向かう時の、勇気ともいうべき心構え、ヘこたれない強い意志、私の言葉でいえばチェレンジ精神というものであろう。

私のいう「行政からの仕掛け」という定義は、この本市の優れた徴税業務に示されている「知恵と挑戦の精神」であると考えている。

 

ふたつめの仕掛けの例として、「ゆるキャラグランプリ」を取り上げたい。A表❸をみて欲しい。この投票に関して 市長が「住みよさランキング33位以上の順位を」と呼び掛けて、見事32位という成果をあげた。まさに市長が目標値をかかげて仕掛けた結果が、成果として顕れた知恵ある挑戦の成功例であろう。大いに評価したい。このことは後で触れる。

 

そこで、この「知恵と挑戦の仕掛けつくり」という観点で、今回3つの期待できる戦略、仕掛けが創出されたことを嬉しく思っている。  

ひとつ目の期待は、「地域政策部」が創立されたこと。 私は金を使って事業を仕掛ける部門と、金の使うことをけん制する部門が同じ企画財政部内に共存するのは無理があると主張してきた。また、秩父市や摂津市を視察した体験からして、従来の縦割り行政の壁を取り払う、市長直轄の課題解決部門をつくったらどうかと進言してきた。窮屈な財政状況の中で、価値の高い事業を創出するには、これまでの常識超えの発想、知恵の結集、仕掛けの勝負になると考えるからである。そのような意味で今回の地域政策部は、まさに「知恵と挑戦の仕掛け屋」の役目をになうと評価し期待したいと考える。

ふたつ目の期待は、地域政策部内に広報を含めたこと。  私は、昨年度行われた井戸端会議における、市民の発言に疑問を感じている。「財政構造の見直し」を宣言した本市のフトコロ事情に関して、「本市の財政は大丈夫か」という発言がまったくなかったこと。このような行政からの財政危機宣言という大切なメッセージが、市民に思惑どおりに伝わっているのかということに、これで良いのかという疑念をもったということである。       では、この非常事態宣言を行政はどのような手段で市民に伝えようとしたのか、そして、市民からどのような反応があったのか…この宣言への市民の反応が鈍いことは、逆に、広報の役割の重要度を示唆していないであろうか。

新しい部門の創出の機会に、知恵と挑戦の仕掛けの広報、戦略広報の取組を期待するものである。

3つめの期待は総合計画で表現された「くだまつ愛」である。  このフレーズはシビックプライドほどスマートではないが、ずっと判りやすい。私は、このくだまつ愛を、市民に地域の発展に協力して欲しいという強いメッセージであると受け止めている。

そこで先ほどの「ゆるキャラキャンペーン」を取り上げたい。この投票は7月から9月までの87日間で基本的に一人一日1ポイントという条件の中で行われたと確かめた。87日で11.689ポイントということは、一日平均134人の方が投票した計算になるが、職員全員が自分一人だけでも一日1件投票すれば、400件になる、奥様に促せば800件になるのに…それなのに134件なのである。

私の指摘したいのは、市長の呼びかけに職員全員が応じなかったのはなぜかという点。職員にくだまつ愛がないわけではない。しかし、職員それぞれにそこまで対応しなかった何らかの越えられない理由があるのではないか。

現在市には職員、議員、そしてとそれぞれのOB、加えてそれぞれの家族、親兄弟、これら大きな掴みで市政に関わる人数…これを、仮に「公僕メンバー」と呼ぶことにするが、この公僕メンバーを合計すれば57千人の人口の1割程度になるのではないかと試算する。この公僕メンバーには、一般の市民よりも増してくだまつ愛を求められないか。人口の1割は大きい。この公僕メンバーに対し、行政が少々カッコ悪くても頼ろうとしてはどうかということ。

もうひとつ…このくだまつ愛を広報が仕掛けるという観点でホームページや広報誌に市長が市民に向かって『判ってください』と訴えるページを創ること。そこには、どのようなことを取り上げるか・・・たとえば  ➀現在の財政状況はこのようになっています…コロナで大変です  ②たばこ税はこんなに助かっています…A表❼。たばこは市内で買っていただけませんか ③ふるさと納税の収支はこのような状況です…A表❽。市税収に負担の大きい他市町へのふるさと納税は抑えてくださいませんか  ④ふるさとサポーターという制度をご存知でしょうか。あなたのご縁者に勧めていただけないでしょうか  ⑤我が街の宝である大城存続のために、1年に1度、敢えて泊まっていただけませんか     

これらの訴えをホームページ、潮騒に掲載するとともにそれぞれの課題克服状況も数字で市民に知らしめる・・・私は、行政の方から訴えるという手法は市民の声を聞く以上に市政の円滑な運営に資すると思っているが、ともかく、このような訴えは格好悪いか。

 

つづいて活力ある市政の原点である5万7千人の人口維持に関して・・・人口増はその増加数割合以上の市民税の増加という付加価値を生むという事実をA表❺で確認して欲しい。

A表❹の㋥の妊娠届数は深刻な状況になっている。このまま推移すれば、平常年500人の新生児が令和3年には100人減の400人程度まで落ち込むおそれがある。

中国新聞10月21日報道では、5月の妊娠届の減少率は 山口県は前年同月比▲29.7%で全国一の減少率とあった。全国に先駆けて妊娠を控える県民気質は何なのであろうか・・・ともかく、コロナ禍の元での「意識した産み控え」は明確に起こっている。

もうひとつ・A表❹㋬…社会増減は順調な推移になっているが、本市の人口動向に都会からの転入=都会離れの動きがみられるか、今後も注視が必要になる。

いずれにしても、5万7千人の人口維持には相当ハードな対応が必要。仕掛けなしでは実現できないと考える。

 

もうひとつ、地域政策部ができたことで夢を語りたい。友好都市である。 来春は下松工業高校創立100年になる。何代か前の日銀支店長が「山口県の瀬戸内工業コンビナートがここまで成熟した裏には、地元の優秀な工業高校出のエンジニアの存在がある」と指摘していたが、それら工業高校の最初は下松工業高校にあり宇部工業高校にある。

ここで宇部工業高校卒である私の父親の話をさせていただく。私の父は昭和16年、開戦の2ケ月前に、南満州鉄道の関連会社、済南鉄道の入社試験を受けるために、下松工業高校まで汽車で来たそうである。高校までの道筋は知人に訊いたとおり、下松駅から線路の上を西に1キロ歩いた。そうしたら一面黄金色の田んぼの中に下松工業高校の校舎がぽつんと見えた。・・・これが父のひとつ話であった。もうひとつ、父が死ぬまで何度も繰り返していたのは、宇部工業高校の紀章が下工と同様「山工」であったこと。

下工はどうしてできたか。恩人は久原房之助翁である。校庭に銅像がある。久原房之助翁の紹介は省くが、その生涯はまさに精進、努力の人生ではなかったか。

私は翁の生涯を通じて ①本人の生き様はもちろん、 ②長州人と財閥の共調(癒着)のエネルギー、 ③明治以降の鉱工業業界の爆発=藤田財閥、日本鉱業、日立、日産の創設とその後我が国に果たした役割、 ④戦前戦後の政界の混迷、そして何より、 ⑤下松市を人口18万人の大工業都市にというロマン・・・これらを市民にこどもたちに知って欲しいと考える。   この仕掛けは大河ドラマに取り上げるべく運動する価値がある壮大なロマンと思うがどうか。

ここに日立市の大畑美智子さんという方の久原房之助に関して水戸市で行われた講習会のパンフがあるが、80人の人を集め、受講料3000円、5日間にわたって行われた本格的な講義である。

サブタイトルは「日立鉱山と秋田と山口をつなぐもの「」とありそして、下松市の項には『働く、住む、学ぶ、楽しむを考えた都市構想・・・下松市にかけた理想産業都市の夢』とある。久原翁を世に知らしめようと意気込むこのような方もいる。ぜひ一度本市に呼んでいただきたいと思う。本市でも下松市歴史研究会でも永年翁の顕彰に力を入れておられる。

そこで、日本鉱業株式会社発祥の地、秋田県小坂町とあるまちの高い煙突の日立市と、下松工業高校と日立製作所笠戸工場が100年を迎える本市が友好都市を結んで久原房之助翁の足跡をたどる過程で街づくりとふるさと愛を仕掛けるという構想をどう思うかお聞きする。

 

最後に…A表❸をもう一度みて欲しい。私はこの4市にアンケートをさせていただきうち3市から回答を得た。なかでも、泉佐野市はゆるキャラだけでなく、ふるさと納税も全国トップで知られ、手数料収入も高レベルである。この泉佐野市の政策推進課からの回答は、真摯で丁寧、成功理由を自ら分析認識し、自信があふれた強烈なもので、さすが仕掛けの街であると受け止めた。学ぶことが多いと思うので、ポイントを紹介する。          

私からの問1…ゆるキャラグランプリにどのような仕掛けをしたか…に対しては、地元企業や団体から協力を得て(つまり寄付をもらって)全国のゆるキャライベントに積極参加した。つまり、仕掛けた。ゆるキャラだけが目的でなく、市そのものの認知度アップを目指している…との答え。

問2…ふるさと納税にどのような仕掛けをしているか…に対しては、ふるさと納税は市長、市議、職員、事業者が一体となって「市として全力で取り組む覚悟があるかどうか」という点に尽きると考える…との強烈な回答。市として全力で取り組む覚悟・・・どう聞かれたか。          

問3…その他の事業に対する仕掛けの知恵を教えて欲しい…に対しては、各種の仕掛けがトップダウンに行われており、職員もその姿勢に触発されている。「できない理由を探す」のではなく、「何ができるか、どうしたらできるか」を考える風土が醸成されてきた…との自信あふれる答え。          

問4…仕掛けのセンスに欠けている下松市にアドバイスはないか…という問いに対しては、「常にアンテナを張る」「先手を打つ」ということが肝要ではないか・・・とのさらに強烈な答えであった。

 

泉佐野市の政策推進課は「市長公室(おおやけのしつ)」という市長直属部門のなかにある。本市にも市長直轄な地域政策部という仕組みができた。今後、この部門からどのような仕掛けが発信されるのかと、期待をもってみつめていきたい。